ダイヤモンド富士を見てからどこか行ける場所はないかな、と探していたところ「ひるヶ岳」が目に入ります。あれ?丹沢の山じゃなかったけ?と思って地図を拡大すると、「ひる」とルビが振ってあるけれど漢字が違う!「蛾(が)」じゃん!とテンションが上がったので、ここにしました(笑)。

1.蛾ヶ岳紹介

  • 基本情報 標高:1,278m  山梨百名山・日本百低山
  • 所在 山梨県西八代郡市川三郷町と身延町の境界
  • 駐車場 水明荘第2駐車場(普通車500円 バイク200円 ※現金のみ、お釣りなし)
  • 電波 登山場所全てで良好(au)
  • 所要時間(参考ヤマップ ) 
    • 蛾ヶ岳登山口→四尾連峠→大畠山→蛾ヶ岳→登山口 4時間20分
    • 蛾ヶ岳登山口→大畠山に寄り道→蛾ヶ岳ピストン(往復) 4時間
    • 蛾ヶ岳登山口→大畠山ピストン(往復) 1時間30分 

「ひる」なのになぜ蛾なのか?

かつて躑躅ヶ崎の武田屋敷(現在の甲府市)からこの山の上に太陽が来ると正午を示すため、「ひるヶ岳」と命名され、のちに「蛾」の文字があてられたという説。また山頂の北部にヒルが多く生息していたという説、中国の峨眉山にかけて命名されたという説など。

⬆赤ピンは四尾連湖湖畔に佇む水明荘をさしています。近くに駐車場があります。

2.コースタイム(めんだこの実際)

S水明荘第2駐車場(蛾ヶ岳登山口)8:55ー9:15大畠山9:20ー10:05蛾ヶ岳10:10ー蛾ヶ岳南尾根経由ー四尾連峠11:35ー11:45四尾連湖11:50ーG駐車場11:52

蛾ヶ岳への登りは一般道を使いましたが、下山道はそのままピストンはつまらないな、と思い蛾ヶ岳の少し東から南へ下る尾根をたどり、地形図上で破線で記されている道を辿ってちょっとした周回コースをとりました。結果、赤テープはあるものの一般道に比べて道が荒れていました。地形図読みができるかたのみの通行をオススメします。

⬆のようなコースをとりました。登山口ー分岐①への道、分岐③ー蛾ヶ岳への道がルート内では急登ですので気をつけてください。他尾根上は気持ちよく歩けます。

3.コース紹介

⬆蛾ヶ岳登山口に一番近いのは水明荘第2駐車場です。30台位は止められそうです。7時~17時までの営業時間なので気をつけてください。料金は上記の通りで、写真の軽トラックの荷室に封筒とボールペンがあるので、車のナンバーを書いて、お金を入れて、助手席窓から投函します。時期時間によっては封筒がなかったり、私が行った時はボールペンのインクが出なくて自分のを使ったりしたので、予め用意しとくのが無難です。四尾連湖のそばにも駐車場はあります。料金変わらずです。駐車場の近くの四尾連湖公衆トイレは冬季閉鎖(12月1日~3月下旬)です。水明荘のトイレを借りてください。

⬆左のような落ち葉の道をつづら折れに登っていきます。右の写真が分岐①(1標高,090m)のものです。ペース間違えて息が上がってしまいました。太陽が眩しく日も当たるのですが、やはり気温が低いので顔がつっぱります。

写真分岐ですどちらに行っても山頂通じます登りやすさ変わりません方が日当たり良好です。ゆるやかに登ると標高1,117.6m大畠山に到着です。ここまでなら四尾連湖でキャンプしてナイトハイクで甲府市街の夜景を見に来るのも楽しそうです。右の写真は大畠山から甲府方面の景色で画面中央は八ヶ岳です。八ヶ岳から昇る雲が龍に見えなくもない?

⬆分岐1から蛾ヶ岳(ひるがたけ)への道のりには道が切れ落ちている箇所もあります。道幅は狭くても60cm以上あるので、気をつけていけば大丈夫です。この道の近くに四尾連湖が見えるポイントがあります。写真だとあまり見えないですね。新緑が出てくると完全に隠れてしまいそうです。

⬆落ち葉街道があったり、橋がかかってたり、分岐③(標高1,170m)からの最後の登りで疲れたりしながら歩けば山頂に到達です!富士山方面と甲府市方面両方の展望があります。ベンチは1基ですが、まぁまぁ広い山頂です。おやつ休憩そこそこに釈迦ヶ岳方面へ下ります。

⬆右手に注意して歩くと分岐④(標高1,270m)に「天狗岩に続く尾根」の標識があります。右の写真で伝わりきらないですが、尾根幅が狭く傾斜は蛾ヶ岳への登りと同じくらいです。靴の滑り止め機能を信じて下っていきます。段々と傾斜は緩やかになって安心して歩けるようになります。

⬆西肩峠に向けてトラバースしている道中です。分岐①から蛾ヶ岳への道と比べて細かったり、右の写真では登山道が流されてそのままです。ヤマップではこのルートはコースタイム記載がなく、一般道扱いはされていません。「みのラブ」さんではコースタイム付きで紹介されています。

⬆西肩峠(分岐③)に合流しました。奥から歩いてきて左に行くと蛾ヶ岳へ、画面下へ行くと来た道にもどります。右の写真の案内板でも今来た道は印されていません。行く方は自分で道を切り開く自身をもって自己責任で。思いつきでは入らないでください。

⬆大畠山を過ぎて四尾連湖を回るように進むと狼煙台、文学碑公園とよばれる四尾連峠に出ます。誰の文学碑かというと野沢一さんだそうです。

四尾連湖文学碑公園に佇む野沢一さんとは誰か?

出身 山梨県 1,904~1,945年生  

1,929~1,933年に四尾連湖畔で過ごし、ここで書き留めた詩を自費出版した方。

以下文学碑に刻まれていた詩の写しです。⬇

“ああ、されど湖のみは いつもながらの風光に かげうららかに
桃の枝は育ち 栗鼡はないて 小鳥はあのたのしいさわがしい 唱をうたい
山は立ち 水はほとばしりいでて とこしえに しびれの湖と たたえられてあれよ
野沢 一”(詩碑のまま)

四尾連湖やその周辺の動物植物を賛称する内容・・・みたいです。私には高尚すぎてよく分かりませんが。現在でも詩集の購入は可能ですので、興味がある方は手にとって見てください。

⬆峠から直接蛾ヶ岳登山口に行ける道(写真上向き)と湖に降りられる道(写真右向き)に分かれます。私はせっかくだからと四尾連湖に降りてから登山口に戻ってきました。

4.四尾連湖

⬆標高約900mにあるほぼ円形の湖です。「ゆるキャン」のアニメ1期6~7話の舞台としても知られていると思います。キャンプサイトへの荷物の運搬に船かリヤカーでしか近づけない、ということから万年オートキャンパーの私は縁がないのですが、湖畔のベンチで湖を眺めているとここでのんびり過ごしたいと思えるところでした。

怪牛伝説

400年ほど前、夏の暑い日に武者修行風の兄弟が湖にたどり着きましたが、弟がその場に倒れて息絶えてしまいます。兄が湖面をふと見ると今まで静かだった湖面が波立ち、小山のように盛り上がり角を突き出した怪物が現れます。兄は応戦したため怪物は怪牛の本性を現し辺りを自身の血でそめのたうち回ります。その姿を見た兄もまた息絶えてしまいます。村人たちは2人を哀れに思い、山頂に手厚く供養しました。

この年の夏は日照りが続いて作物が枯れるほどでしたが、兄弟の犠牲が天に通じたのか間もなく雨が降り始め田畑が潤ったため村人は救われました。それ以来、間伐が続くと牛の首を背負って山に登り兄弟の墓参りをし、牛の頭に綱をつけて湖に投げ入れ雨乞いをするようになりました。たちまちのうちに天が曇り、山を駆け下りるのも間に合わない程の激しい雨が降ると言い伝えられています。

尾崎龍王

四尾連湖の神様は尾崎龍王という龍神です。4つの尾を連ねた龍が住んでいる湖ということで四尾連湖と言われるようなったそうです。湖ぞいに石碑がたてられています。蛇足ですが、湖では貸しボートがあり、足漕ぎボートの中には龍をモデルにした(?)と思われるものがありました(四尾連湖写真右側の右隅)。伝説に思いを馳せながら遊んでみるのもいいかもしれません。

四尾連湖の成り立ちは?どうしてなくならないの?

結論としては「はっきりしていない」です。火山活動でできたカルデラ湖、または地面が陥没してできた陥没湖ともされています。

また、水深が1年を通じて約10mで湖に住む魚が見えるほどキレイな水です。ですが、この湖に川からの水の流入はありません。湖のどこかにある湧き水と雨水だけです。では排水は?台風などの一時的な大雨で水位が上昇することはあるそうですが、溢れ返るようなことは記録がないようです。四尾連湖より下にある集落の中に「浄身石(じょうしんせき)」と呼ばれる湧き水が滲み出る岩があります。きっと何箇所もこういう場所があり、湖の排水はなされているのだと思います。

浄身石には言い伝えがあり、コノハナサクヤヒメが富士山の噴火から逃れ、四尾連湖へ向かう途中に産気づき、この浄身石に座って身を浄めたといいます。